この記事のポイント

  • 易占いは、コイン3枚があれば「略筮法」というやり方で誰でも試せる
  • コインの表裏の組み合わせで陰陽を決め、これを6回繰り返して「大成の卦」を立てる
  • 表裏の出方には老陽・老陰・少陽・少陰があり、老陽と老陰が出た位置が「変爻」になる
  • 六十四卦は卦辞で全体の方向性を、爻辞で変爻の具体的な意味を読む
  • 略筮法は変爻が必ず出る点が、本筮法や梅花心易とは異なる特徴

コインを3枚、机の上にジャラッと転がすだけ。それだけで、古代中国から連綿と伝わる易占いを、自分の手で試せるとしたら——ちょっと意外じゃありませんか?

「易占い」と聞くと、白いひげの先生が筮竹(ぜいちく)をシャラシャラ鳴らしているイメージが強いかもしれません。でも実は、その本格的な作法を簡略化した「略筮法(りゃくぜいほう)」というやり方があって、これなら100円玉3枚で手順を追うことができるんです。

この記事では、略筮法でコインを使って卦(か)を立てる具体的な手順と、出てきた六十四卦・爻(こう)をどう読み解けばいいのかを、順番に整理していきます。むずかしい専門用語も、ひとつずつわかる言葉に置き換えながら進めますね。読み終わるころには、実際にコインを転がして占ってみたくなっているかもしれません。

コインが導く、易経六十四卦への扉

易占いとは?タロットや星占いとの違い

タロット・星占いと並ぶもうひとつの東洋占術 タロット・星占いと並ぶもうひとつの東洋占術

易占いとは、古代中国の思想書『易経(えききょう)』をもとに、陰と陽の組み合わせでできた六十四種類の「卦」から物事の状況や方向性を読み取る占術のことです。

タロットや西洋占星術が、絵柄や天体の配置という視覚的なシンボルを読み解くのに対して、易占いは「陰」と「陽」というシンプルな二つの記号の組み合わせだけで、あらゆる状況を表そうとするのが特徴です。この陰陽の考え方は、九星気学で恋愛相性を見るときの土台にもなっていて、東洋の占術に共通する基礎体力のようなものだと思っておくとイメージしやすいと思います。易経には全部で64の卦辞と384の爻辞があり、その組み合わせの多さが、易占いの奥行きを生んでいます。

卦・爻・八卦ってそもそも何?基本の言葉を先に整理

陽爻と陰爻が重なり八卦から六十四卦へ 図1: 陽爻と陰爻が重なり八卦から六十四卦へ

卦(か)とは陰陽を表す線を6段重ねた図象のことで、爻(こう)とはその卦を構成する1本1本の線のことです。

線には2種類あって、途切れていない一本線が「陽爻」、真ん中で切れている線が「陰爻」です。この陽爻・陰爻を3本組み合わせたものが「八卦」で、天・沢・火・雷・風・水・山・地という自然の象徴に対応しています。

八卦自然象徴されるイメージ
乾(けん)力強さ、リーダーシップ、創造
兌(だ)喜び、コミュニケーション
離(り)知性、美しさ、輝き
震(しん)行動力、始動、勢い
巽(そん)柔軟性、浸透していく力
坎(かん)試練、深い智慧
艮(ごん)実直さ、止まること
坤(こん)包容力、受け入れる力

この八卦を上下に2つ重ねると、8×8で六十四卦が完成します。下の3爻を「下卦(内卦)」、上の3爻を「上卦(外卦)」と呼び、この組み合わせを読み解くのが易占いの土台になります。

準備するもの、略筮法の基本ルール

略筮法でコインを使って占う場合、必要なのは同じ種類のコイン3枚だけです。特別な道具は要りません。

一般的には、金額が書かれた面を「裏」、絵柄が描かれた面を「表」として扱います。表を陽、裏を陰の側と捉えるイメージです。占うときは、まず「今日、彼から連絡が来るか」のような一問一答ではなく、「彼との関係を今後どう進めていくべきか」くらいの少し幅を持たせたテーマを一つだけ心に決めます。一度に複数のことを重ねて占うのは避けたほうがいい、というのが多くの解説サイトに共通する考え方です。気持ちが定まったら、コイン3枚を両手で軽く包み、静かに机の上へ転がします。

卦の立て方:6回コインを投げて大成卦を組み立てる手順

コインを6回投げて卦を積み上げる手順 図2: コインを6回投げて卦を積み上げる手順

略筮法では、コイン3枚を1セットとして6回投げ、出た組み合わせを下から順に積み上げていくと、6本の爻がそろった「大成の卦」が完成します。

  1. 占いたいテーマを一つに絞り、静かな気持ちでコイン3枚を手の中で軽く振る
  2. 机に転がし、表裏の組み合わせを記録する。これが一番下の「初爻」になる
  3. 同じ手順をあと5回繰り返し、二爻・三爻・四爻・五爻・上爻と、下から上に向かって積み上げていく
  4. 記録した6本のうち、下の3本が下卦、上の3本が上卦となり、六十四卦のうちの1つが定まる

出た組み合わせは、老陽・老陰・少陽・少陰のどれかに分類されます。表3枚なら老陽、裏3枚なら老陰、裏2枚・表1枚なら少陽、表2枚・裏1枚なら少陰と判定するのが一般的なやり方です。

コインの出方呼び名陰陽
表3枚老陽陽(変化する)
裏2枚・表1枚少陽陽(変化しない)
表2枚・裏1枚少陰陰(変化しない)
裏3枚老陰陰(変化する)

せっかく時間をかけて立てた卦なので、鑑定結果を記録して見返す工夫のように、日付とテーマを添えてノートに書き残しておくと、あとで答え合わせをするときの手がかりになります。

老陽・老陰が「変爻」になる理由と、之卦の読み方

変わりゆく爻と、之卦へ姿を変える瞬間 変わりゆく爻と、之卦へ姿を変える瞬間

変爻(へんこう)とは、老陽・老陰が出た爻のことで、この爻だけ陰陽が反転し、本卦とは別の「之卦(しか)」という卦へと姿を変えます。

略筮法の特徴は、この変爻が必ずどこかに1つ出るように設計されている点です。本卦が「今の状況」を表すのに対して、之卦は「このまま進んだ先にどう変化していきそうか」という展開の方向性を示すとされています。もし老陽・老陰が複数の爻で同時に出た場合は、より上(後)の爻を優先して読むという考え方が紹介されていることが多いです。ただし複数の変爻の扱いは流派によって差があるので、まずは基本形である「変爻1つ」のパターンに慣れておくのがおすすめです。

六十四卦の読み方:卦辞と爻辞、どちらを優先する?

六十四卦を読むときは、卦全体の意味を示す「卦辞」で大きな方向性をつかみ、そのあと変爻に対応する「爻辞」で具体的なアドバイスを読み取るのが基本の順番です。

384ある爻辞は、それぞれの爻が置かれた「位置」によっても意味合いが変わります。初爻は物事が始まったばかりの段階、上爻は物事が極まった段階というように、爻の位置そのものが時間の経過や発展段階を表しているとも言われているんです。ここまでくると、単に「良い卦・悪い卦」で終わらせず、「今どの段階にいるのか」まで見えてくるので、読み解きがぐっと立体的になります。

【事例(フィクション)】

30代女性のAさんは、交際中の彼との将来がなかなか見えず、モヤモヤを抱えていました。試しにコインで略筮法を立ててみたところ、出たのは「地天泰(ちてんたい)」に近い卦。地天泰は、天と地の気が調和し合う、円満やバランスを表す卦とされています。変爻の位置から「今は無理に答えを急がず、対話を重ねる時期」と受け止めたAさんは、自分から素直な気持ちを彼に話してみることにしたそうです。

※この事例はフィクションであり、実在の人物や出来事とは関係ありません。

略筮法・本筮法・梅花心易の違い、結局どれを選べばいい?

略筮法はコインを6回投げて簡単に卦を立てる方法、本筮法は筮竹を使う十八回操作の伝統的な方法、梅花心易は日時や身の回りの数から卦を導く方法です。三つとも『易経』という同じ体系を土台にしていますが、道具と手間のかけ方が大きく違います。

方法道具変爻の出方向いている人
略筮法コインまたは筮竹(三回操作)必ず1つ出る手軽に始めたい初心者
本筮法(十八変筮法)筮竹出ないことも複数出ることもある伝統的な作法を重視する人
梅花心易不要(日時や物の数を使う)卦の構成上、独自に判断いつでもどこでも占いたい人

初めて易占いに触れるなら、道具が少なく変爻の扱いもシンプルな略筮法から始めるのが、いちばん取り組みやすいと思います。慣れてきてから、本筮法や梅花心易にも手を伸ばしてみると、易経の奥行きがより実感できるはずです。

【事例(フィクション)】

40代会社員のBさんは、転職するかどうかの踏ん切りがつかずにいました。略筮法で立てた卦は「山水蒙(さんすいもう)」寄りのもの。山水蒙は、霧の中にいるような迷いや、経験不足からくる手探りの状態を表す卦とされています。Bさんはこれを「まだ判断材料が足りない段階」というサインとして受け止め、焦って結論を出さず、情報収集と信頼できる人への相談を続けることにしたといいます。

※この事例はフィクションであり、実在の人物や出来事とは関係ありません。

占う前に知っておきたい、易占いでつまずきやすいポイント

易占いでいちばんつまずきやすいのは、一つの卦に一つの意味しかないと思い込んでしまうことです。

同じ卦でも、どの爻が変爻になっているかによって、読み解くべきポイントはまったく変わってきます。それから、あまり良くない意味とされる卦(否・剥のような卦)が出たときも、「絶対に悪いことが起きる」という予言ではなく、「今は慎重に動くべき時期」というサインとして受け止めるのが、多くの解説で共通している向き合い方です。焦って何度も占い直すのではなく、一度出た卦とじっくり向き合ってみる。そのほうが、易占い本来の「立ち止まって考えるための道具」という良さが活きてくると思います。

よくある質問

Q:易占いは初心者でもコインだけで占えますか? はい、コイン3枚があれば略筮法という方法で誰でも試せます。表裏の組み合わせを老陽・老陰・少陽・少陰に分類して6回積み上げるだけなので、筮竹や算木といった専用の道具は必要ありません。

Q:変爻が2つ以上出た場合はどう読めばいいですか? 略筮法では基本的に変爻は1つですが、まれに複数出ることもあります。その場合は、より上の爻(後に立てた爻)を優先して読むという考え方が紹介されていることが多いです。まずは変爻1つの基本形に慣れてから、応用として捉えるのがおすすめです。

Q:略筮法と梅花心易はどちらが当たりやすいですか? どちらが優れているというものではなく、道具や手順が違うだけで、同じ『易経』の体系をもとにしています。当たりやすさで選ぶというより、自分が続けやすい方法を選ぶほうが、長く占いと付き合っていけると思います。

Q:六十四卦の意味を全部暗記しないと占えませんか? 覚えていなくても大丈夫です。卦が出るたびに、書籍やサイトで卦辞・爻辞の解説を調べながら読み解くやり方で十分に使えます。何度か試すうちに、よく出会う卦の傾向は自然と頭に残っていきますよ。

Q:易占いの結果があまり良くなかったときはどう受け止めればいいですか? 「絶対にこうなる」という予言ではなく、今の状況を見直すきっかけや、注意しておきたい時期のサインとして受け止めるのが一般的な向き合い方です。卦はあくまで思考を整理する材料で、最終的にどう動くかを決めるのは自分自身、という視点を忘れずにいたいですね。

まとめ

易占いは、コイン3枚と少しの時間さえあれば、誰でも「略筮法」という形で自分の手で試せる占術です。表裏の出方を老陽・老陰・少陽・少陰に分けて6回積み上げ、変爻の位置と之卦を確認する——この流れさえつかめば、六十四卦・384爻という広大な易経の世界に、自分のペースで触れていけます。

もしコインで卦を立ててみても、結果の解釈がすっきりつかめなかったり、もっと踏み込んで話を聞いてほしいと感じたりしたときは、経験のある占い師に相談してみるのも一つの手だと思います。占いは答えそのものというより、自分の気持ちを整理するための材料。まずは今日、手元にあるコイン3枚から、気軽に試してみてくださいね。