この記事のポイント
- 一問一卦とは、ひとつの具体的な質問に対して一度だけ卦を立てて答えを受け取る、易占いの基本作法のことです
- 三枚のコインを6回振るだけで、筮竹を使わずに六十四卦のどれかを導き出せます(略筮法)
- コインの表裏の出方は「老陽・少陽・少陰・老陰」の4パターンに分類され、これが爻の性質を決めます
- 気に入らない結果が出たからといって占い直すのは、易占いの伝統ではむしろ避けるべき行為とされています
- 卦はあくまで「今の状況を映す鏡」であって、答えを決めつけるものではありません
同じ悩みについて、占いのアプリやサイトを何度も開き直してしまった経験、ありませんか? 一度出た結果が気に入らなくて、つい「もう一回だけ」とやり直してしまう。実はこれ、易占いの世界ではあまり良くないとされている行動なんです。
易占いには「一問一卦」という考え方があります。ひとつの具体的な質問に対して、一度だけ卦を立てて、その答えをまっすぐ受け取る。そういう向き合い方です。この記事では、三枚のコインを使って自分で卦を立てる「略筮(りゃくぜい)」という方法を、手順から読み方のコツまで一気に説明していきます。筮竹も専門知識も要りません。手元に硬貨が3枚あれば、今日からでも試せますよ。

一問一卦とは何か
一度きりの問いと向き合う、鏡のような静けさ
一問一卦とは、ひとつの明確な質問に対して一度だけ卦を立て、出た結果をその質問への答えとして受け取る易占いの基本姿勢のことです。何度も占い直して、都合のいい結果が出るまで粘る、というやり方とは真逆の発想です。
易学を専門に扱う日本易学振興協会の解説でも、同じ事柄について複数回占うことは避けるべきだとされ、古典にも「再筮は瀆る(さいぜいはけがす)」と記されているといいます。一度の結果を軽んじて占い直すことは、占いそのものへの敬意を欠く行為だ、という考え方なんですね。
これ、タロットにも似た原則があります。気に入る答えが出るまで引き直すのは、結局「自分が最初から欲しかった答え」を後付けで探しているだけになりがちだからです。一問一卦は、その誘惑にブレーキをかけてくれる考え方だと思います。だからこそ、占う前に「何を知りたいのか」をできるだけ具体的に絞っておくことが大切なんです。「彼と私はどうなるの?」ではなく、「今の彼との関係を、私はこれからどう進めていくべきか」くらいまで、質問を自分の言葉で固めておくイメージです。
略筮・本筮・梅花心易とのちがい
略筮とは、50本の筮竹を使う本格的な「本筮法」を簡略化し、三枚のコインなどで短時間に卦を立てる方法のことです。本筮法は20〜30分ほどかかる手順を踏みますが、略筮ならその場で数分で完結します。
易占いには、この略筮のほかにも本筮法・梅花心易といったいくつかの立卦法があります。梅花心易は、コインを振るような作為的な操作をせず、目に入った物の数や時刻など「今この瞬間」の情報から卦を導く方法で、略筮とはアプローチがかなり違います。それぞれの違いをもう少し詳しく知りたい方は、易占いの略筮・本筮・梅花心易の違い〜卦の立て方と六十四卦を自分で読む手順〜で整理しているので、あわせて読んでみてください。
この記事では、初めての人が一番取り入れやすい「三枚のコインによる略筮」に絞って、実際の手順を見ていきます。
三枚のコインで占う準備
必要なのは、同じ種類のコイン3枚だけです。100円玉3枚でも、10円玉3枚でも構いません。ただし、占っている途中で種類を混ぜないことだけは守ってください。
まず、コインのどちらの面を「表」とするか、占う前に自分で決めておきます。100円玉なら、桜の花が描かれた面を表、数字side(裏)を裏とする、という具合です。一度決めたら、その回の占いの間は変えません。
次に、質問を一つ、できるだけ具体的な形で心の中に用意します。ここが実はいちばん軽視されがちなポイントなんですよね。「仕事どうしよう」ではなく「今の職場に残るか、転職に動くか、今の自分はどちらに気持ちが向いているのか」くらいまで自分の中で言語化しておくと、卦を読むときの手がかりがぐっと増えます。
環境についても少し気を配るといいと思います。日本易学振興協会の解説でも、飲酒後や疲労時、感情的になっている状態での占いは避けるべきとされています。占いは思考を整理するための時間なので、頭がクリアなときに向き合うのが理想です。
コインを6回振って卦を立てる実践手順
図1: 6回のコイン投げが積み上がり卦になる流れ
三枚のコインを6回投げ、その都度の表裏の出方を記録していくことで、6本の爻(こう)が下から積み上がり、ひとつの卦が完成します。爻とは、卦を構成する1本1本の横棒のことで、陰と陽のどちらかの性質を持ちます。
手順はシンプルです。質問を心の中で念じながら3枚のコインを両手で覆うようにして振り、低い位置でそっと開いて出た面を確認します。出方によって、爻の性質は次の4種類に分かれます。
| 表の枚数 | 判定 | 爻の性質 |
|---|---|---|
| 3枚とも表 | 老陽 | 陽の爻(変わりやすい) |
| 表2枚・裏1枚 | 少陽 | 陽の爻(安定) |
| 表1枚・裏2枚 | 少陰 | 陰の爻(安定) |
| 3枚とも裏 | 老陰 | 陰の爻(変わりやすい) |
占い専門サイト「易経ネット」で紹介されている方法でも、この4区分に沿って判定するとされています。「老陽」「老陰」は変爻(へんこう)と呼ばれ、今の状態から今後変化していく可能性を示す特別な爻です。それ以外の「少陽」「少陰」は、比較的安定した状態を表します。
この作業を6回繰り返し、1回目の結果を一番下(初爻)、6回目の結果を一番上(上爻)として、下から順に積み上げます。下の3本(初爻〜三爻)を「下卦」、上の3本(四爻〜上爻)を「上卦」と呼び、この上下の組み合わせによって六十四卦のどれに該当するかが決まる仕組みです。
【事例(フィクション)】
30代女性のAさんは、今の彼との関係を続けるべきか悩んでいました。「別れるべきか」ではなく「今のこの関係を、自分はこの先どうしていきたいのか」という形に質問を絞り込み、三枚のコインで卦を立てたところ、変爻を含む卦が出たといいます。Aさんはその結果を、彼との関係が「今のまま」ではなく、何らかの変化の途中にあるサインとして受け取り、次に会うときは自分の気持ちをきちんと言葉にしてみようと決めたそうです。
※この事例はフィクションであり、実在の人物や出来事とは関係ありません。
出た卦をどう読むか、変爻が出たときは
図2: 本卦から之卦へ、変爻が示す変化の流れ
卦が完成したら、下卦と上卦の組み合わせから該当する六十四卦を六十四卦表で調べ、その卦が示す象徴とキーワードを、自分の質問に当てはめて読んでいきます。ここで大事なのは、卦の言葉を文字通りに受け取らないことです。
たとえば「山」や「風」といった自然物の象徴が出てきたとしても、それは実際の天候の話ではなく、状況の性質を比喩的に表しています。「山」なら止まる・立ち止まるイメージ、「風」なら流動的・広がっていくイメージ、というふうに、象徴を今の自分の悩みの文脈に置き直して考えるのがコツです。
もし6回のうち老陽や老陰(変爻)が出ていた場合は、そこがもう一段深い読み方のポイントになります。変爻がある卦は「今の状態(本卦)」から「これから変化していく先の状態(之卦)」への移り変わりを示していて、読み方も一段複雑になります。変爻が出たときの具体的な読み方の手順は、易占いで変爻が出たときの読み方〜本卦と之卦の関係から六十四卦の変化と流れを読む手順〜で詳しく説明しているので、変爻ありの卦が出た方はぜひそちらも見てみてください。
一問一卦を活かすコツとよくある失敗
迷いを一つの言葉に結び直す、静かな整理の時間
一問一卦を活かす一番のコツは、質問を占う前の段階でどこまで具体的にできるかにかかっています。ここが甘いと、どんな卦が出ても「まあそう言われればそうかも」という受け取り方になってしまい、結局何も整理できないまま終わってしまうんですよね。
よくある失敗のパターンは、大きく二つあります。ひとつは、先ほども触れた「気に入らないから占い直す」パターン。もうひとつは、質問が抽象的すぎて、出た卦のどの部分を自分の状況に対応させればいいのか分からなくなるパターンです。
対処法としては、占う前に「この質問に対して、どんな答えが出たら自分は動くのか」を一度考えてみることをおすすめします。たとえば「転職に動くべきか」を占うなら、「動くべきと出たら情報収集を始める」「今はまだと出たら3ヶ月後にもう一度考える」くらいまで、あらかじめ自分の中で行動と結びつけておくんです。そうすると、卦が出たあとに「で、結局どうすればいいんだっけ」と迷う時間がぐっと減ります。
【事例(フィクション)】
40代会社員のBさんは、部署異動の話が出ていて、受けるべきか迷っていました。「異動を受けるか、今の部署に残るか」という質問で卦を立てたところ、比較的安定した爻が並ぶ卦が出たそうです。Bさんはこれを「大きく動く時期ではなく、今の場所で力を蓄える段階」というメッセージとして受け取り、異動については上司に相談する時間を少し先に延ばすことにしたといいます。
※この事例はフィクションであり、実在の人物や出来事とは関係ありません。
よくある質問
Q:易占いの略筮は、初心者でも本当にできますか? はい、できます。筮竹を使う本筮法のような専門的な道具や長い手順は不要で、コイン3枚と六十四卦表さえあれば、誰でもその場で卦を立てられます。ただし、六十四卦の意味を読み解く部分は多少の慣れが必要なので、最初は解説サイトや書籍を手元に置きながら進めるのがおすすめです。
Q:一問一卦なのに、同じテーマを別の聞き方で占い直すのはNGですか? 短期間に同じ悩みを繰り返し占うのは避けたほうがいいとされています。ただ、状況が実際に大きく変わった場合や、十分に時間が経ってからあらためて占うことは問題ないという考え方が一般的です。目先の結果が気に入らないからすぐ聞き直す、というのが避けたい行動です。
Q:コインの表裏の決め方に、正式なルールはありますか? 決まったルールはなく、占う前に自分でどちらを表とするか決めれば問題ありません。大切なのは、その回の占いの中で表裏の設定を途中で変えないことです。
Q:変爻がまったく出ない卦の方が、いい結果ということですか? そういう意味ではありません。変爻の有無は「良い・悪い」ではなく「変化の兆しがあるか、比較的安定しているか」を示すものです。変爻がない卦は今の状態が続きやすいことを表し、変爻がある卦はこれから状況が動いていく可能性を示している、という捉え方になります。
Q:略筮と本筮、結果の信頼度に差はありますか? どちらも同じ六十四卦の体系に基づいており、方法の違いによって結果の重みが変わるものではないという考え方が一般的です。本筮法は手順の丁寧さや、占いに向かう姿勢を整える時間として重視されている側面が大きいと言われています。
まとめ
三枚のコインを6回振るだけで、易占いの略筮は誰でも試すことができます。表裏の出方を老陽・少陽・少陰・老陰の4パターンで判定し、下から積み上げて下卦・上卦を組み合わせれば、六十四卦のどれかがそこに姿を現します。
大事なのは、占う前に質問をできるだけ具体的にしておくこと。そして、出た卦が気に入らなくても、すぐに占い直さないこと。一問一卦は、答えを何度も探しに行くための道具ではなく、今のありのままの状況と一度きちんと向き合うための作法なんだと思います。
今日、心に引っかかっている小さな迷いがあれば、まずはその迷いを一文にしてみてください。それだけでも、頭の中は少し整理されるはずです。コインを用意して卦を立ててみるのも、あるいは電話占いで誰かに話を聞いてもらいながら整理するのも、どちらも「今の自分を知るための一歩」として、同じくらい価値があると思いますよ。