この記事のポイント
- 全米100万部超・TikTok発の「シャドウワーク」が2025年1月に日本上陸、占い好きの間でじわじわ広がっている
- 「シャドウ」とはユング心理学の概念で、“まだ生きてこれなかった自分”のこと──黒歴史でも弱点でもなく、抑圧された自己を指す
- 日本語版を翻訳した占星術研究家・鏡リュウジが「2026年の星の配置にぴったり合う」と語った、その星的な文脈とは
- 占いもシャドウワークも「内側を掘る」ツール──その共鳴がZ世代から30〜40代へじわじわ広がっている

「タロットで『前進のとき』と出ても、なぜか動けない」「星読みで『変容の季節』と言われたのに、何かが引っかかって変われない」
そんなもどかしさを感じたことはありませんか?
占いで受け取ったメッセージは腑に落ちた。でも行動できない。その”見えない壁”の正体について、ユング心理学は100年も前から一つの答えを示しています。それが「シャドウ(影)」です。
2025年1月、アメリカのTikTokを中心に大ブームとなった書籍『シャドウワーク・ジャーナル』(著:ケイラ・シャヒーン)の日本語版が発売されました。翻訳を手がけたのは、日本を代表する占星術研究家・鏡リュウジさん。発売から1年以上が経った2026年の今も、占いやスピリチュアルに関心を持つ人々の間でじわじわと反響が続いているようです。この記事では、シャドウワークとは何か、なぜ占い好きにこれほど響いているのか、をご紹介します。
「シャドウ」とは何か──ユング心理学が名付けた”もう一人の自分”
シャドウワークの「シャドウ(影)」は、スイスの精神科医カール・グスタフ・ユングが提唱した概念です。ユング心理学では、人間の心は「意識」と「無意識」に分かれており、その無意識の中でも特に「認めたくない、抑圧された感情・思考・衝動」の塊を「シャドウ(影)」と呼びます。
分かりやすく言えば、「他人には見せたくない自分」や「子どもの頃から封印してきた感情」のこと。「怒りっぽい自分」「嫉妬しやすい自分」「もっと褒められたい自分」──理想の自分像と相容れないために蓋をし続けてきた部分です。
ユングは「影と向き合わない限り、人は自分自身の全体性を生きられない」という考え方を残したとされています。シャドウワークとは、まさにその蓋を開けていく作業のこと。“黒歴史を掘り返す”ように聞こえるかもしれませんが、日本語版を翻訳した鏡リュウジさんは「自分がまだ生きてこれなかった自分と向き合う」という表現を使っています(J-WAVE取材、2025年1月)。
TikTokで全米に火がついた──Z世代が「自分の闇」を直視する理由
「シャドウワーク」の世界的ブームのきっかけは、アメリカのクリエイター・ケイラ・シャヒーンさんが制作した書き込み式ジャーナル「The Shadow Work Journal」です。TikTokの #shadowwork タグを通じて急速に拡散し、全米で累計100万部以上を売り上げる大ベストセラーとなりました。世界27カ国での翻訳・刊行が決定するなど、今も広がりを続けています。
注目すべきは、ブームの中心がZ世代(1990年代後半〜2010年代生まれ)だったこと。PRESIDENT誌の報道では「自分の黒歴史を発掘するしんどい作業なのに、なぜこれほどバズっているのか」と問いかけられていました。
背景の一つとして挙げられているのは「SNS疲れ」の反動です。完璧な自己表現が求められ続けるSNS時代に育った世代が、逆説的に「自分の弱さや影」と向き合うことを選んだ──その出口としてシャドウワークが機能したと見られています。「見せたくない自分」を認めることが、かえって心の解放につながるという逆説は、多くの人の琴線に触れたようです。
【事例(フィクション)】
Aさん(27歳女性)は、TikTokで毎日のようにシャドウワーク関連の動画が流れてきていたものの、「なんか怖そう」と最初は敬遠していました。ところがある夜、「あなたが他人に対してすぐイライラするとき、実は自分の中で抑えていることは何ですか?」という問いを見て、試しにノートに書き始めたそうです。「書いていたら、気づいたら泣いていて、でも書き終わったあとは不思議と気持ちが軽くなった」というような感想は、TikTokのコメント欄でもよく見受けられます。
※この事例はフィクションであり、実在の人物や出来事とは関係ありません。
日本上陸──鏡リュウジが「2026年の星にぴったり」と語ったワケ
世界27カ国で翻訳が決まった「シャドウワーク・ジャーナル」の日本語版は、すばる舎より2025年1月24日に発売されました。翻訳を担当したのは、日本の占星術界でもっとも知名度が高い一人、鏡リュウジさんです。
発売前後にJ-WAVE(81.3FM)の特集インタビューで鏡さんは次のように語っています。「成功するためのステップみたいなことは全然出てこないんです。過去のことばかりに向いてるんです。でも、自分の傷や負の側面と向き合うことで、それが価値のあるものになるんじゃないかと思う」
さらに占星術の観点から「土星と海王星が接近する時期は、理想と現実のせめぎ合いが起こる。現実を見つめるためにも、シャドウワークはこれからの時代にぴったりだ」と述べています。
2026年の占星術を見ると、土星×海王星(牡羊座)の配置がひとつの節目として語られてきました。「夢を現実に接地させる」「自分の本音を掘り下げる」というテーマが流れるこの時期に、シャドウワークの思想は星の文脈とも響き合います。占星術が好きな方には、星の動きとセットで理解すると、より腑に落ちやすいかもしれません。
占いとシャドウワークが「相性いい」理由
占いもシャドウワークも、向かっている方向は実は同じ──「内側にあるものを、外に映して見る」行為です。
タロットカードを引くとき、私たちは「カードが何かを教えてくれる」と感じますが、心理学的には「直感が引き寄せたカードが、無意識の何かを浮かび上がらせている」という見方もできます。ホロスコープに置き換えてみると、土星・冥王星・12ハウスといった「影の惑星・ハウス」は、占星術の文脈でもシャドウワークと共鳴するポイントとして語られることがあります。
| 占い | シャドウワーク | |
|---|---|---|
| アプローチ | 星・カードを通じて自分を映す | 書くことで自分の影を直接見る |
| 方向性 | 時間軸(過去・現在・未来)の整理 | 感情・抑圧のパターンの整理 |
| 必要な知識 | カード・星読みの知識があると深まる | 質問に答えるだけ(知識不要) |
| かかる時間 | 数分〜60分程度 | 1問あたり数分〜30分 |
両者に共通する姿勢は「答えを外ではなく内に問いかける」こと。占いが「天体の動きを通じて自分のパターンを見る」ならば、シャドウワークは「書くことを通じて抑圧された自分を見る」。手法は異なっても、到達しようとしている場所は近いように見えます。
【事例(フィクション)】
Bさん(34歳女性)はタロット歴5年で、毎日のようにカードと向き合ってきました。「『手放す時期』と出ても、何を手放せばいいのか分からなかった」と振り返ります。友人に勧められシャドウワーク・ジャーナルを手に取り、「他人の怒りを見てモヤモヤするとき、その奥に何があるか」を書き始めたところ、「ずっと自分に許可してこなかったことがある、と気づいた」という感覚を得たそうです。タロットで受け取ったメッセージを、ジャーナリングで腑に落とす流れが生まれたと話しています。
※この事例はフィクションであり、実在の人物や出来事とは関係ありません。
どんなことを「書く」のか──ジャーナルの中身と、向き合うときの注意点

「シャドウワーク・ジャーナル」は問いかけ形式のワークで構成されています。たとえば次のような問いに、思ったことをそのまま書き出していきます。
- 「子どものころ、誰かに言われていちばん傷ついた言葉は何ですか?」
- 「他人のどんな行動にイライラしますか?それは自分の中にもある側面ですか?」
- 「誰にも見せていない感情は何ですか?」
- 「“できない”と思い込んでいることで、実は許可していないだけのことは何ですか?」
鏡リュウジさんが「成功のステップが出てくるような本ではなく、過去と向き合うことに向いている」と表現するように、従来の自己啓発本が「こうすれば変われる」を提示するのとは逆の方向性です。「まず”今の自分がある理由”を掘る」というアプローチは、急いで結果を求める現代人にとってはむしろ新鮮に映るかもしれません。
注意点として、シャドウワークは感情の深いところを掘り起こす作業のため、気持ちがつらくなることもあります。一般的に、無理に一気に進めず自分のペースで少しずつ行うこと、つらくなったら休むことが大切と言われています。心理的サポートが必要と感じたときは、専門家に頼ることも大切な選択肢です。
まとめ──「影を知る」ことが、自分をまるごと生きることにつながる

「シャドウワーク」は、黒歴史を責め立てたり、ネガティブな感情に浸ったりするためのものではありません。一般的には「封印してきた自分の一部をそっと認める」ことで、内側のエネルギーが解放されていく──そんなプロセスとして語られています。
占いが好きな人にとっては、「占いで気づいたことをジャーナリングで腑に落とす」ツールとして組み合わせるアイデアは面白いかもしれません。タロットで受け取ったメッセージを、シャドウワークで掘り下げる。ホロスコープで見えてきた課題を、書くことで自分の言葉にしていく。そんな使い方をしている人もいるようです。
2026年、「個」の力が問われる星の配置が続くなかで、「自分をちゃんと知ること」が開運の入口になる──そんな見方が、占いの世界でも静かに広がっています。
「自分の影と、まずは少し仲良くしてみる」。そんなやわらかな入口から、この夏のんびりと自分を掘り下げてみるのも良いかもしれませんね。☁️