この記事のポイント
- タロットは15世紀の北イタリアで生まれた、貴族のためのカードゲームだった
- 占いの道具として使われ始めたのは18世紀のフランス、エッティラ以降のこと
- 19世紀にエリファス・レヴィがカバラと結びつけ、神秘的な意味づけが広がった
- 書店で見かける2大デッキ「ウェイト版」と「マルセイユ版」は、小アルカナの絵柄の有無が最大の違い
- 初心者にはウェイト版、記号としてシンプルに読みたい人にはマルセイユ版が向いている
書店の占いコーナーでタロットカードを手に取ったとき、「これ、そもそも何のために作られたんだろう」って思ったこと、ありませんか? カードには剣や杯、金貨の絵が描かれていて、なんとなく神秘的な雰囲気があります。でも実は、タロットの出発点は占いとはまったく関係のない、ただの「トランプの親戚」だったんです。
この記事では、タロットがゲームの道具から占いの道具へと変わっていった歴史の流れと、初心者が最初にぶつかる「ウェイト版とマルセイユ版、結局どっちを選べばいいの?」という疑問に、順番にお答えしていきます。歴史を知っておくと、カードを引いたときの見え方が変わってくると思うんですよね。今使っているデッキが何を大事にして作られたものなのか、きっと腑に落ちるはずです。

タロットカードはいつ、どこで生まれたの?
北イタリアの宮廷に舞う黄金のカード
タロットの起源は、15世紀前半の北イタリアです。1442年、フェラーラの領主エステ家の帳簿に「トリオンフィ(勝利)のカードパックを購入した」という記録が残っており、これがタロットに関する現存最古の資料とされています(「タロット」Wikipediaの解説より)。
当時のタロットは「タロッキ」と呼ばれるトリックテイキング系のカードゲームで、貴族たちの間で親しまれる知的な遊びでした。現存する最古のデッキは、1440年代から1450年代にミラノのヴィスコンティ家・スフォルツァ家の周辺で作られた「ヴィスコンティ・スフォルツァ版」で、金箔まで施された豪華な一点物です。占いのための道具というより、むしろ美術品に近い扱いだったと考えられます。
つまりタロットは、生まれてから300年近くもの間、占いとは無縁の存在だったということ。ここ、意外と知られていないポイントだと思います。
なぜ占いの道具に変わったの?18世紀フランスの転換点
タロットが「占いの道具」として文献に登場するのは、18世紀のフランスからです。ジャン=バティスト・アリエットという人物が、1783年から「エッティラ」という名で『タロットと呼ばれるカードのパックで楽しむ方法』という書物を分冊で刊行し、史上初の職業的な「タロット占い師」として活動を始めました(「タロット占いとカードの歴史」の解説より)。
このエッティラは、当時流行していた「タロット起源エジプト説」に強く影響を受けていました。実際にはタロットの起源とエジプトを結びつける確かな根拠はないのですが、それでも「古代の叡智が刻まれたカード」というロマンあふれる物語が、当時のヨーロッパで大きな支持を集めたんですね。事実かどうかより、物語として魅力的だったことが広まった理由の一つだと思います。
この頃からタロットは、ゲームの道具という顔と、占いの道具という顔を、両方持つようになっていきました。
【事例(フィクション)】
30代女性のAさんは、転職するかどうかで長く迷っていました。占い自体は半信半疑でしたが、友人に誘われてタロット占いの体験に参加し、「運命の輪」のカードが正位置で出たことをきっかけに、「変化を怖がりすぎていたかもしれない」と自分の気持ちを見つめ直したそうです。結果として転職するかどうかは自分で決めたけれど、迷いに一区切りをつける良いきっかけになったといいます。
※この事例はフィクションであり、実在の人物や出来事とは関係ありません。
タロットとカバラが結びついたのはなぜ?19世紀のオカルトブーム
図1: 大アルカナと生命の樹の対応関係の図
タロットに神秘的な意味づけが本格的に加わったのは、19世紀フランスのオカルティスト、エリファス・レヴィがきっかけです。レヴィは著書『高等魔術の教理と祭儀』の中で、タロットは単なる占いの道具ではなく「神秘を解き明かす鍵」だと主張し、大アルカナ22枚とヘブライ文字22文字を対応づける理論を展開しました(「エリファス・レヴィ」Wikipediaの解説より)。
さらにレヴィは、小アルカナの数札1〜10を、カバラの生命の樹にある10個のセフィロトに対応づけました。数秘術やカバラといった別の神秘思想とタロットが結びついたのは、まさにこの時代からなんです。
この理論はのちのイギリスの秘密結社「黄金の夜明け団」にも大きな影響を与え、次に紹介するウェイト版タロットの誕生へとつながっていきます。占いとしてのタロットの「型」は、実はここでほぼ完成したと言ってもいいかもしれません。
マルセイユ版タロットとは?ゲーム時代の名残を色濃く残すデッキ
マルセイユ版タロットとは、17〜18世紀にフランス・マルセイユを中心に量産され、標準的な型として広まった伝統的なタロットデッキのことです。大アルカナ22枚には寓意的な絵柄が描かれている一方、小アルカナの数札(1〜10)はスートの記号(棒・剣・杯・金貨)が並ぶだけの、トランプに近いシンプルな構成になっています。
これは偶然ではなく、マルセイユ版がもともとゲーム用のデッキとして発展してきたことの名残なんですね。数札に物語性のある絵を描く必要が、ゲームをする上ではそもそも無かったわけです。人物札(キング・クイーン・ナイト・ペイジ)にだけは絵が描かれていますが、数札は象徴のみ。読み解くには、カード自体の絵よりも数字やスートの意味、周囲のカードとの配置を重視する読み方が求められます。
ウェイト版タロットとは?1909年に生まれた「絵で読む」革命
ウェイト版タロット(ライダー・ウェイト版)とは、1909年にイギリス・ロンドンのライダー社から発売された、占い専用に設計されたタロットデッキのことです。神秘思想家のアーサー・エドワード・ウェイトが黄金の夜明け団での知見をもとに構成を指示し、画家パメラ・コールマン・スミスが全78枚のイラストを手がけました(「ウェイト版タロット」Wikipediaの解説より)。
このデッキの画期的な点は、それまで象徴だけだった小アルカナの数札すべてに、物語性のある情景を描いたことです。例えば「ペンタクルの3」なら職人が仲間と協力して仕事を進めている様子、「ソードの9」なら夜中に悪夢にうなされる人物、というふうに、カード単体を見ただけで意味が伝わるように設計されています。スミスはこの絵をわずか半年ほどで描き上げたと伝えられていて、当時としても相当なスピード感だったようです。
現在、初心者向けの解説書や電話占いの現場でもっとも広く使われているのが、このウェイト版です。恋愛カードの意味を深掘りしたいときは、タロットのペンタクル(金貨)が恋愛占いで出たときやタロットのワンド(棒)が恋愛占いで出たときのように、小アルカナ一枚ずつの絵柄をヒントに意味を読み取る解説が主流になっているのも、ウェイト版の絵柄がベースにあるからなんです。
ウェイト版とマルセイユ版、結局どこが違うの?比較表で整理
図2: 2大デッキの構造の違いを一目で比較
ウェイト版とマルセイユ版の最大の違いは、小アルカナの数札に絵が描かれているかどうかです。占いのしやすさを重視したいならウェイト版、シンプルな象徴から直感で読み解きたいならマルセイユ版が向いています。
| 項目 | マルセイユ版 | ウェイト版 |
|---|---|---|
| 成立時期 | 17〜18世紀・フランス | 1909年・イギリス |
| 出自 | ゲーム用デッキの標準型 | 占い専用に新規設計 |
| 大アルカナの絵 | あり(寓意画) | あり(寓意画+象徴を強化) |
| 小アルカナの数札 | 記号のみ(棒・剣・杯・金貨) | 全て情景つきの絵柄 |
| 読み方の中心 | 数字・スート・配置の意味 | カードの絵そのものの直感的な印象 |
| 初心者向け度 | ◯(暗記量は多め) | ◎(絵から意味を連想しやすい) |
どちらが「正しい」タロットということはありません。マルセイユ版は象徴の体系を深く学ぶ楽しさがありますし、ウェイト版は絵から直感的に意味をつかみやすい。二つは優劣ではなく、設計思想の違いなんですよね。
【事例(フィクション)】
40代会社員のBさんは、職場の人間関係に悩み、初めてタロットショップの店頭鑑定を利用しました。使われたのはウェイト版で、「ソードの9」が逆位置で出たとき、鑑定士から「心配事の多くは、実際に起きていることより頭の中で膨らんでいることが多いかもしれませんね」と伝えられたそうです。絵に描かれた表情がそのまま自分の状態と重なって見え、Bさんは「言葉より先に絵で納得できた」と感じたといいます。
※この事例はフィクションであり、実在の人物や出来事とは関係ありません。
初心者はどっちを選ぶべき?デッキ選びの判断軸
分かれ道に立つ、デッキ選びの心象風景
初めての1枚を選ぶなら、多くの解説書や講座がウェイト版をベースにしているという理由だけでも、ウェイト版を選ぶメリットは大きいです。小アルカナの絵柄からイメージを膨らませられるので、記号を丸暗記しなくても読み進めやすいんですね。
一方で、「もっとタロットの成り立ちや象徴の体系を深く知りたい」「シンプルな絵から自分なりの解釈を育てたい」という人には、マルセイユ版も魅力的な選択肢です。数字やスートの意味を基礎から学ぶ過程そのものが、タロットへの理解を深めてくれます。
迷ったときの判断軸はシンプルです。まず一人で練習しながら覚えていきたいなら、絵で意味が伝わるウェイト版から。すでにタロットに触れたことがあり、もう一段深く探求したいならマルセイユ版、というふうに順番で考えるとわかりやすいと思います。実際にプロの鑑定士に相談する場面でも、電話占いの霊感・霊視鑑定とは?何がわかる・タロットとの違いと視てもらうときのコツで触れているように、鑑定士によって得意なデッキや読み方のスタイルは異なります。相性が合う占い師を探すのも、タロットとの付き合い方の一つですね。
タロットの歴史を知ると、読み方はどう変わる?
タロットの歴史を知ると、カードを「絶対的な答えを出す魔法の道具」ではなく、「何百年もかけて人が意味を積み重ねてきた象徴の体系」として見られるようになります。ゲームから始まり、エッティラが占いに転用し、レヴィがカバラと結びつけ、ウェイトとスミスが絵で物語を与えた——この積み重ねの上に、いま私たちが手にしているタロットがあるわけです。
だからこそ、出たカードに一喜一憂しすぎず、「このカードは、今の自分の何を映しているんだろう」と自分の状況に引きつけて考える読み方が向いていると思います。もし本格的にスプレッド(カードの配置法)を学びたくなったら、タロットのケルト十字スプレッドを自分でやるも、次のステップとして参考にしてみてください。
よくある質問
Q:タロットは本当に古代エジプト起源なんですか? 確かな史料上の根拠はなく、現在では否定的に見る研究者が多いです。18世紀にエッティラらが唱えた「タロット起源エジプト説」が広まった影響が大きいのですが、現存する最古のタロットは15世紀イタリアのものであることがわかっています。
Q:初心者はウェイト版とマルセイユ版、どちらを買えばいいですか? 迷ったらウェイト版がおすすめです。小アルカナの数札にも情景が描かれているため、絵から意味を連想しやすく、独学でも読み進めやすい設計になっています。
Q:タロットとトランプは関係あるんですか? 関係があります。タロットはもともとトランプに似たトリックテイキングゲームの一種として生まれ、大アルカナに当たる絵札が加わったものです。今のトランプのスート(ハート・ダイヤ・クラブ・スペード)も、タロットの棒・杯・剣・金貨のスートが変化して生まれたという説があります。
Q:占いに使われるようになったのはいつからですか? 文献上はっきりと確認できるのは18世紀後半、1783年にエッティラが占い専用の書物を刊行して以降です。それ以前の300年近くは、主にゲームの道具として使われていました。
Q:デッキによって同じカードでも意味が違うことはありますか? あります。ウェイト版は絵の情景から意味を汲み取る前提で設計されていますが、マルセイユ版は数字とスートの象徴体系から意味を読み解きます。同じ「ソードの9」でも、着目するポイントが少し変わってくるんですね。
まとめ
タロットは、15世紀イタリアの貴族のゲームとして生まれ、18世紀にエッティラが占いの道具に変え、19世紀にレヴィがカバラと結びつけ、1909年にウェイトとスミスが絵で読むデッキへと発展させてきました。ウェイト版とマルセイユ版の違いも、この歴史の積み重ねの結果なんですよね。
どちらのデッキが正解、ということはありません。今の自分が読みやすいと感じる方を選んでみてください。もしカードを引いてみて解釈に迷ったときは、プロの鑑定士に相談しながら読み方の感覚をつかんでいくのも、タロットとの付き合い方の一つだと思います。